張月樵筆 雨中竹に鶏図(部分)
2025年2月1日(土曜日)から4月2日(水曜日)
企画展
「江戸絵画に新風が吹く」
- ■会場
- 蓬左文庫展示室
- 本草学の進歩や文学・芸術における復古思潮などを背景に、江戸時代後半は絵画史にも新 たな変化が見られます。名古屋地域でも顕著な新潮流となった「長崎派」「南画」「復古やまと絵派」の作品を紹介します。
展示の詳細案内
花鳥図屛風 六曲一双
(かちょうずびょうぶ)
花や鳥を写生的に描く図を貼り込んだ押絵貼屛風です。濃密な色彩と陰影法が注目されます。グラデーションを駆使した花や葉の彩色が、博物学的な鳥の形態とあいまって、超現実的な空間を創出しています。清の画家沈南蘋(しんなんぴん)の長崎滞在をきっかけに流行を見せた画趣を持ち味とする長崎派、南蘋(なんぴん)派といわれる画風です。尾張徳川家8代宗勝が長崎派の立役者熊斐(ゆうひ・1712から72)に注文した作品と考えられます。
熊斐筆 宝暦3から4年<1753から54>
徳川美術館蔵
展示期間:右隻 2025年2月1日から3月2日、左隻 2025年3月4日から4月2日
孔雀図
(くじゃくず)
松の太い枝に片足を上げた孔雀がたたずむ姿を描いています。作者の増山雪斎(せっさい)は伊勢長島藩主であった増山正賢(まさかた・1754から1819)のことであり、文人大名として有名です。たくさんの絵画作品を残しており、多くは長崎風の濃彩花鳥画です。本図は装飾性と端正さが同居した名作と評価されています。
増山雪斎筆
江戸時代 19世紀
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年2月1日から3月2日
孔雀図
(くじゃくず)
孔雀が木の太い枝に止まっています。あたりは馥郁(ふくいく)たる香りに満ちています。樹幹や花弁は長崎派風ですが、すこぶる上質に描かれています。作者は山田宮常(きゅうじょう・1747から93)。名古屋で長崎派の名手として知られていた画家で、名古屋出身の南画家山本梅逸(ばいいつ)の師匠でもあります。画面右下の墨書から、明の文人画家陳淳(ちんじゅん・1484から1544)を追慕した作として描いたと分かります。
山田宮常筆
江戸時代 19世紀
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年3月4日から4月2日
神洲奇観図
(しんしゅうきかんず)
35歳で名古屋の東部・川名の般若台に隠居を果たして、詩作、画作三昧の生活を送り、中国の文人思想を体現した丹羽嘉言(にわかげん・1742から86)の作。平安時代以来の名所でもあった富士山を、爽やかに写生的に描いています。とはいえ、現代の写生画とは異なり、対象の「真」なる景を描き留めようとする中国の「真景」論にもとづく作画と考えられます。嘉言の作品が、当地の知識人たちに愛されたのは、文人的な生き方や作画態度があってこそです。
丹羽嘉言筆
明和7年<1770>頃
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年2月1日から3月2日
山水画帖
(さんすいがじょう)
文人の理想とする境遇を描いた小画面12図からなる画帖です。各図に題をつけるとすれば「山中茅屋図」「松下二高士図」「眺海高士図」「月下吹笛」「寒江独釣」など、まさに文人趣味にあふれた図様です。作者の勾田台嶺(たいれい・生歿年不詳)は尾張生まれで、中林竹洞(ちくとう)に画を学んでいます。のちに江戸に出て文人画家広瀬台山(たいざん・1751から1813)に学び、漢詩人の大窪詩仏(しぶつ・1767から1837)とも交流を持ちました。
勾田台嶺筆
文政2年<1819>
名古屋市博物館蔵
会期中場面替え
花卉草虫図
(かきそうちゅうず)
大きな画面に、四季の草花類をこれでもかと展開させ、そこに昆虫類を描き込んでいます。詰め込みすぎとの誹(そし)りには当たらないことは、細部を見れば納得できます。セミやアゲハチョウからオケラにいたるまで、昆虫類の写生は全く正確無比、驚きの世界が展開しています。重なり合う葉も濃淡に十分な配慮がなされ、無駄な描写は見られません。花弁のグラデーションは、長崎派の遺風を感じさせますが、それを変容させた別世界がここにはあります。
山本梅逸筆
弘化元年<1844>
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年2月1日から3月2日
畳泉密竹図
(じょうせんみっちくず)
花鳥画で有名な梅逸(ばいいつ)ですが、山水画にも見逃すことのできない作品は多くあります。細かな線のみで描き出された景は、繻子織(しゅすおり)の下地(絖本(こうほん)、サテン)によくなじみ、湿潤な大気を感じさせてくれます。遠くと近く、2つの滝の音が竹林越しに聞こえてくるようです。この種の山水図につきものの茅屋(ぼうおく)や高士の姿は描かれていません。そうしたものを描かずに、文人の理想郷を描き出す手腕は見事という他はありません。
重要美術品
山本梅逸筆
江戸時代 19世紀
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年2月1日から3月2日
若竹鶺鴒図屛風 二曲一隻
(わかたけせきれいずびょうぶ)
ほぼ正方形の画面の中央部やや左寄りに、数本の若々しい細身の竹を描いています。竹の葉には雪が少し積もり、上下に鶺鴒(せきれい)と文鳥(ぶんちょう)が配されています。最小限のモチーフを絶妙に配置した粋な作品です。このような作品の存在は、田中訥言(とつげん・1767から1823)の古典的やまと絵学習が単なる懐古趣味で終わっていないことを教えてくれます。琳派風の洒落た感覚も加味しながら、ここには新しい画境が広がっています。
田中訥言筆
江戸時代 19世紀
名古屋市博物館蔵
展示期間:2025年2月1日から3月2日
十二月行事図絵巻
(じゅうにかげつぎょうじずえまき)
年中行事は古代以来の画題です。江戸時代後期になると、名古屋では復古やまと絵の画家たちを中心に、一般の人の年中行事を描く作品がしばしば登場します。やさしい筆使いと上品な彩色は、渡辺清(きよし・1776から1861)の作品の美質です。
渡辺清筆
江戸時代 19世紀
名古屋市博物館蔵
会期中場面替え
PDFファイルをご覧になるにはアクロバットリーダーが必要です。
左のアイコンをクリックしてソフトをダウンロード(無償)してください。
Acrobat及びAcrobatロゴは、Adobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)の商標です。
本文終了