古文書を読む義親
(昭和10年(1935年)・キング撮影)
徳川林政史研究所蔵
2023年11月11日(土曜日)から12月15日(金曜日)
企画展
「尾張藩と木曽山―徳川義親のまなざし―」
- ■会場
- 蓬左文庫展示室
- 徳川美術館の創設者であり19代当主の徳川義親が、尾張藩が管理・運営した木曽山の研究を志し、徳川林政史研究所を開設して今年で100周年を迎えます。
義親の木曽山研究の歩みや収集した数々の史料を紹介します。
展示の詳細案内
尾張藩は、徳川家康から寺社や城館の主要財を古くから産していた木曽山(現・長野県)を与えられ、江戸時代を通じてその自然を守りながら管理・運営を続けてきました。徳川黎明会の創立者である19代当主徳川義親は、尾張藩にとって重要な木曽山の歴史研究を志し、大正12年(1923)に美術館開館に先駆けて徳川林政史研究室(のちの徳川林政史研究所)を開設しました。その研究は現在も受け継がれ、今年で開設100年を迎えます。本展では江戸時代から近代にいたる尾張徳川家と木曽山との関わりに注目し、当主が手懸けた木曽山・尾張藩研究をたどるとともに、戦前の蓬左文庫(東京)と林政史研究所との意外な結びつきもひもときます。
額「蓬左文庫」 徳川義親(尾張家19代)筆
(がく「ほうさぶんこ」)
昭和10年(1935)、尾張家伝来の蔵書を保存・公開するための文庫を開設するにあたり、義親は名古屋を意味する「蓬左」の語を冠して、「蓬左文庫」と名付けました。左側には、「尾張家初代義直は好学で父・家康や歴代蒐集の図書典籍が多かったが、廃藩後は散逸したものも多い。今後の保存のため先祖の遺徳を継いで文庫を設立した」との旨が記されています。
かつて蓬左文庫があった建物は現在、公益財団法人徳川黎明会の本部として使用されており、この額は現在、その玄関ホールに掲げられています。
公益財団法人徳川黎明会蔵
昭和8年(1933)
写真「古文書を読む義親」(しゃしん「こもんじょをよむよしちか」)
徳川林政史研究所写真帳のうち 雑誌『キング』撮影
古文書を机に広げ、メモを取りながら調査する義親の様子を撮影した一枚です。大日本雄弁会講談社刊行の雑誌『キング』掲載用に撮影されました。写真の中の古文書に「一、人足五人」の文字が読み取れることから、この時、義親は江戸時代の帳簿から経済史的な側面を解き明かすための下調べをしていたのかもしれません。
徳川林政史研究所蔵
昭和10年(1935)
木曽川通絵図 巻四 片野温写(原本:神谷勘右衛門筆)
(きそがわとおりえず)
王瀧川(おうたきがわ)と荻曽川(おぎそがわ)の合流地点より下流の川を木曽川と呼びます。この絵図には、木曽山から伐り出した材木が名古屋に至るまでの木曽川流域の景観を描いています。巻四の巻末は、最終的に堀川と合流し太平洋へ流れ込む地点にある白鳥役所(名古屋市熱田区)が描かれ、ここは木曽川で運搬された材木の集散地でした。
徳川林政史研究所蔵
昭和16年(1941)
原本:江戸時代 享保12年(1727)
木曽名跡誌 山村良祺(山村家12代)筆
(きそめいせきし)
地名の考察や古歌・古跡、木曽地域に生息する動植物などがまとめられた地誌です。木曽山の樹木のうち、ヒノキ・サワラ・マキ・アスヒ・ネズコは尾張藩が伐採を禁止しており、これらを「木曽五木(きそごぼく)」と言います。この書物は尾張藩の木曽山を管理していた木曽代官の山村良祺(よしき)が弘化2年(1845)頃に著しました。
徳川林政史研究所蔵
江戸時代 弘化2年(1845)頃か
木曽山材木伐出之図
(きそやまざいもくきりだしのず)
江戸城西の丸再建にあたり、裏木曽の井出小路山(いでのこうじやま・岐阜県中津川市)から材木を伐り出し、錦織綱場(にしこおりつなば)(岐阜県八百津町)まで、木曽川に流して運搬する様子を描いています。江戸幕府へ伐り出しの報告のために製作された絵巻の写しで、伐り出し・製材・運搬などの様子が順を追って記されています。
個人蔵
大正14年(1925)
原本:江戸時代 天保9年(1838)
出小路本谷出水後木曽川渡入迄夜中働之図 御材木川狩之図 十鋪のうち
(いでのこうじもとだにしゅつすいごきそがわわたしいれまでよなかはたらくのず)
材木を川の上流から流すことを「川狩(かわがり)」といいます。江戸城西の丸再建にあたり、木曽山から伐り出した材木を川に流して運搬している様子が確認できます。松明を灯していることから、人びとが夜通し働いていたこともわかります。
この絵図には「川路氏印」が捺されています。これは川路聖謨(かわじとしあきら・1801から1868)のことで、西の丸再建に際して御用掛(ごようがかり)を命じられ、裏木曽に出張していため、川路家にもこうした伐り出しを描いた絵図が伝来しました。
徳川林政史研究所蔵
江戸時代 天保9年(1838)
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