本阿弥光室折紙 元和七年六月三日
刀 無銘 兼光 附属
2023年6月3日(土曜日)から7月17日(月曜日・祝日)
企画展
「極める!江戸の鑑定」
- ■会場
- 蓬左文庫展示室
- 江戸時代には、刀剣や書蹟・絵画など、それぞれの分野で美術品の真贋や価値を評価する「鑑定」が行われていました。作品と折紙・極札・箱書といった鑑定の証から、鑑定の様相にも迫ります。
展示の詳細案内
美術品の真贋や価値を評価する「鑑定」には、画題や製作地・製作者などを見極める専門的な知識が必要とされます。江戸時代には、刀剣の本阿弥(ほんあみ)家をはじめ、刀装具の後藤家、書蹟の古筆(こひつ)家、絵師の狩野家・住吉家、茶道の各家元たちによって、それぞれの分野の鑑定が行われていました。
本展では、鑑定の対象となった作品と、鑑定結果を示す折紙(おりがみ)・極札(きわめふだ)・箱書(はこがき)などから、科学分析用の機材や記録用の鮮明な写真すらなかった時代に行われた鑑定の様相に迫ります。
中殿御会図 伝藤原為氏筆(ちゅうでんぎょかいず)
(附 二代畠山牛庵極札・正筆書住吉廣定折紙 文政十三庚寅年六月)
建保6年(1218)8月13日の夜、清凉殿(せいりょうでん)において、順徳(じゅんとく)天皇が開催した和歌と管絃の会を、藤原信実(のぶざね・1176から1265)が記録した絵を原本とする模本です。江戸時代初期の古筆鑑定家・畠山牛庵(はたけやまぎゅうあん)による極札(きわめふだ)や古筆家による略式の鑑定書である「正筆書(しょうひつがき)」、住吉廣定(ひろさだ・1793から1863)による折紙など、6点の鑑定書が附属し、模本ながら本巻がいかに珍重されていたかがうかがえます。
室町時代 16世紀
江戸時代 17世紀
江戸 文政13年(1830)
徳川美術館蔵
展示期間:2023年6月29日から7月17日
烏丸光廣添状 寛永四年仲秋(藤原定家自筆書状「山門状」附属)
(からすまるみつひろそえじょう かんえいよねんちゅうしゅう ふじわらていかじひつしょじょう さんもんじょう ふぞく)
「山門状(さんもんじょう)」と呼ばれる藤原定家自筆の書状(重要文化財・徳川美術館蔵)に添えられた書状の一通です。江戸時代初期を代表する文化人で、詠歌・書・茶の湯・古筆の鑑定などさまざまな分野で活躍した烏丸光廣(からすまるみつひろ・1579から1638)による書状です。「この書は定家の真筆で、証書など必要としないほど明らかである。あえてそれを証明するのは花を見て花と称し、月を見て月と称すようなものだ」と記しています。華麗な文言には、光廣の高い教養が発揮されています。
江戸時代 寛永4年(1627)
徳川美術館蔵
刀 無銘 郷義弘 名物 五月雨郷
(かたな むめい ごうよしひろ めいぶつ さみだれごう)
刃文が五月雨の頃の霧を思わせるため、または五月雨の頃に作者が極められたため、「五月雨郷」と名付けられたとされる名刀です。刃文は一見静かに見えますが、細かな変化が多く表れています。
作者の郷(江)義弘は越中(えっちゅう)国(富山県)松倉郷(まつくらごう)に居住したとされる鎌倉時代後期の刀工で、正宗の弟子と伝わり、江戸時代には正宗・吉光とともに天下三作と称され珍重されました。
黒田長政・徳川秀忠(2代将軍)ほか所持
鎌倉時代 14世紀
徳川美術館蔵
茶入之次第 伝小堀遠州筆
(ちゃいれのしだい でんこぼりえんしゅうひつ)
大名茶人・小堀遠州(えんしゅう・1579から1647)が、47種類の茶入についてその名前と特徴を記した巻物の写本です。当時、形状も基準となっていたはずですが図はなく、分類ごとに土と釉薬の様子、底の形状が記されています。現代では、陶磁器を生産していた窯跡からの出土品を基準とする分析が主となっていますが、そうした情報がない時代には細かな観察から茶入を分析・分類していた様子がうかがえます。
江戸時代 17世紀
徳川美術館蔵
千宗旦竹茶杓 銘 二人静
(せんそうたんたけちゃしゃく めい ふたりしずか)
千家三世の元伯宗旦(げんぱくそうたん・1578から1658)による二本一対の茶杓で、能の曲目「二人静」にちなんで銘がつけられています。
本品は、裏千家四代仙叟宗室(せんそうそうしつ・1622から1697)が内箱の蓋裏と身底に、同八代又玄斎一燈(ゆうげんさいいっとう)宗室が中箱の蓋裏に、同十一代玄々斎(げんげんさい)精中(せいちゅう)宗室が中箱蓋表と外箱蓋裏に書付をしています。茶の湯道具の名品では、このように何重もの箱と箱書が添えられ、鑑定の保証度が補強されていくことがよくあります。
仙叟宗室(裏千家4代)・又玄斎一燈宗室(同8代)・玄々斎精中宗室(同11代)箱書
江戸時代 17世紀
徳川美術館蔵
黒樂茶碗 銘 横槌 伝樂二代目長次郎作
(くろらくちゃわん めい よこづち)
箱蓋裏に表千家七代如心斎(じょしんさい)天然宗左(てんねんそうさ・1706から51)が「二代目 黒茶碗 銘 ヨコ槌(花押)」と書付けています。樂焼を専らとした樂家の二代を常慶(じょうけい)とする説もありますが、ここでは二代目長次郎(ちょうじろう)という人物を指していると考えられます。二代目長次郎は、初代長次郎(生年未詳から一五八九)の次世代の人物で、史料から想定されている程度で、あまり良くわかっていません。
常慶の作風と異なる本碗の場合は、長次郎という伝称があるものの、長次郎の典型と区別するために、如心斎が「二代目」と書付けていた可能性もあります。
桃山-江戸時代 16-17世紀
徳川美術館蔵
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